【INSPO】『愛という名の支配』に学ぶフェミニズム

フェミニズム=モテないおばさんのひがみ、私もこの本を読むまでそう思っていました。無知で気づかない方が幸せ、けれどこれからの時代、女性として生きていく上で知っておきたい差別の話。

きっかけはニューヨークで感じたアジア人への目線

多人種国家アメリカの中でも多様性に寛容とされるニューヨーク。それは、はじめての海外生活をここに決めたひとつの理由でもありました。

実際日本人に対してそこまで敵意をむき出しにする人はいませんでしたし、何なら皆優しく、困っていると助けてくれる。地下鉄では私が座り、ルームメイトが立って話をしているだけで、隣のイケイケな黒人の男の子がシートを立とうとしてくれるくらい、思いやりに溢れた素敵な街です。

でもふとした瞬間や言葉じりに、アジア人に対する目線…言ってしまえば差別を感じたことも。気づかない方が幸せなのでスルーしたり、見えない、聞こえないふりをして。

肌の色だけで差別をされるということ。日本、というよりアジア人としての意識やアイデンティティと向き合ういいきっかけとなりました。日本では日本人が大多数ですし、日本語を話せれば英語ができなくたって困らない。治安も良くてご飯も美味しい、今となっては物価も安い。

でも一歩この国を出れば、自分のルーツへの誇り、存在意義を持っていないと、生きていくことさえ難しいという現実を目の当たりにしました。

でも、この感覚はじめてじゃないかも

帰国後しばらくしてから、‘離婚した先輩を励ましてほしい’と男友達から頼まれた食事会でのこと。離婚の原因を聞いていると、まずお相手の親御さんから婿入りを打診され悩みに悩んだそうです。今の世の中の流れなら、葛藤もする。と思いきや、彼が私たちに向けて悪気なく発した言葉に驚愕。

だって、姓が変わっちゃうんだよ。自分が自分じゃなくなるみたいじゃない?

だって。少しでもフォローしようと思っていた10秒前の私、お疲れさま。

法律で決まっているわけでもないのに、女性はそれ、当たり前のように受け入れているんですけど。そういった意見に対して、「女性の覚悟が足りないだけだ」なんて言われたりする不条理よ。

それだけじゃない。大人しく話の続きを聞いていて受けた、優しそうな物腰ながら女性のこと、というか自分以外を尊敬できない人という印象。別れ際、お相手から「私は外国人の感覚に近いから、あなたとは無理」と言われたそう。その意味がわからず苦しんでいると。

ふたりのことはふたりにしか分からない。けれど、女性以前に個として常にその人よりも下に扱われることに、お相手は耐えられなくなったのでしょう。世間ではエリートとされる仕事をしている彼女のことだから、きっと自立心も人一倍。いちばん身近なパートナーに、笑顔で尊厳を踏みにじられ続けていたとしたら…無理もありません。離婚の原因は、無自覚な男尊女卑(私調べ)。

あ〜あ。なんで他人様の離婚話を聞いただけなのに、こんな思いをしなきゃいけないんだ。モヤモヤしていると、ふとニューヨークでのできごとを思い出したんです。アジア人に対しては下に見てもいい、目に見えない構造的な差別と女性差別はとても似ていることに。

そんなときに、とある女性誌で山内マリコさんの担当編集をしている友人が勧めてくれた本が、今回紹介する『愛という名の支配』。私がこれまでの人生で違和感を持ったすべてのことに対する答えが、この本に書いてありました。

差別差別って意識するから、差別につながる。そう思って生きてきたけど、そうじゃなかった。

 

幸せなことに、これまで私は女性であることをコンプレックスにすることなく生きて来られた方だと思います。前置きがだいぶ長くなってしまったけれど、「私はフェミニストじゃないから」「フェミニズムって、ヒステリーおばさんの戯言でしょ」そんな風に思っている人にこそ読んでほしいし、心の奥底まで田嶋陽子先生の言葉や思考が染み入るはず。

全然‘Pretty Little Things’じゃないけど、たまにはこういう記事があってもいいかな。

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